【お肌資産管理 Vol.5】 真のウェル・エイジングには、「若さを保つ!」という患者様の決意も重要

2016年は本をたくさん読みました。夏暑すぎてあまり戸外活動できなかったためですが、おかげでいろいろと考えるきっかけをもらえました。たとえば、芥川賞受賞作の『コンビニ人間』。賞の選評にもある通り、いまの時代を気負わずまっすぐ描いた快作だと思いました。また、石原慎太郎さんの『天才』。田中角栄さんの「なりきり自叙伝」、興奮しながら一気に読みました。

さらには、本ではありませんが、リオ五輪閉会式の「アベマリオ」や映画『シン・ゴジラ』も見ました。どの作品も、作品を創る方々が、現在をただ批判・否定するだけではなくリスペクトすべきはしています。その上で、私たちに、次の新しい空気を産む元気をつけようとしている。読むひと・観るひとが、ここのところずっとモヤモヤしているところを、「そうか! それか! そうすればいいのか!」と気づくように後押ししている。そんな風に感じました。

わたくしごときの勝手な読み方・見方で、ごめんなさい。でもこれ、以前、クリニックの患者さまのお茶の先生から教えていただいたことが影響しているかも。いわく、「〝おもてなし〟とは、お客様ご自身の心の奥の想いや悩みを見出し、しかしそれを言葉では説明せず、あくまでお客様ご自身が自然と気づくようにして差し上げること」なのだそうです。

お茶の先生がこの話をエグゼクティブの方々になさると、「組織運営や部下の方のマネジメントに役立つ」と喜ばれるそうですが、私にもわかる気がいたします。ドクターが、患者様に「暗喩」や「示唆」だけで接していたら商売上がったりですが(笑)、たしかに患者様ご本人が「若さを保つ!」と決意して下さらなければ、どんなウェル・エイジング治療も奏功しません。

私の診療も、「気づき」をうながすクリエイティビティをもって、新しい元気を差し上げられるようになりたい。そんなことを考えた年でした。


小栁 衣吏子

文:小栁 衣吏子

六本木ヒルズけやき坂「アオハルクリニック」院長。
職人かたぎの美容皮膚科医にして、美と健康の求道者。
日本皮膚科学会と日本抗加齢医学会の専門医。
順天堂大学医学部卒業。
福岡県出身。