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「モノがいい」だけでは不十分海外の人々を魅了するデザインやプロモーションが「クールジャパン」のキーポイント

少子高齢化による人口減少で、今後はますます「クールジャパン」、すなわち中小企業の海外進出の重要性が高まっていくと予測される。
これからの「クールジャパン」に必要なものは何か。
数多くの海外進出を支援してきたクールジャパン機構の代表を務める太田伸之氏に話を聞いた。

 

中小企業にとってますます重要性が高まる海外進出

「クールジャパン」が日本の戦略において重要視されるようになったのは、日本国内および海外の経済状況の変化も関係している。
ご存じの通り、日本では少子高齢化により人口が減少すると予測されている。一方で、アジア各国を見てみると、中には陰りが見え始めた国もあるものの、長期的視野で見れば若い人の人口が多いこともあり、経済は成長を続けていくと見られている。

これまでにも大企業を中心に多くの日本企業がアジアへ進出しているが、日本とアジアの経済状況の変化を考えると、今後は大企業に限らず中小企業においても海外市場への進出が必要な時代になっていくはずだ。
「クールジャパン」、すなわち中小企業の海外進出に国を挙げて取り組むのも当然の成り行きだと言えよう。

当社の富裕層顧客の中には、ビジネスオーナーの方が多いこともあり、今回クールジャパン機構の代表を務める太田氏に話を伺った。

 

リターンの大小よりクールジャパンであるかどうか

クールジャパン機構は、簡単に言ってしまえば、海外進出を考えている企業を支援するための官民ファンドだ。
このような企業に対して、投資をおこなっている。
扱う案件もコンテンツ、食、サービス、インバウンドと様々で、投資金額も1億円程度のものから100億円を超すものまである。

しかし、当然ながらどんな案件でもいいというわけではない。
クールジャパン機構では、次の3つを判断の基準にしていると言う。

1:「クールジャパン」に合致しているか
2:携わる人々に熱意があるか
3:採算が取れる事業かどうか

この3つが全て揃っているかどうかが重要であり、リターンの大小は必ずしも第一義的な要因ではないという。
ここが民間のファンドとの大きな違いのひとつだ。
このような一般的なファンドの既成概念にとらわれない投資ができるからこそ、長期的な支援も可能だという。

 

インバウンド、ハイエンドも重要なキーワード

ツーリズムEXPOジャパンやVisit Japan Travel & MICE Martなど、国内で行われた旅行商談会に、ほぼ全ての都道府県が参加していたことからも明らかなように、近年インバウンドビジネスが活発化してきている。
クールジャパン機構にもインバウンド関連の相談が寄せられることがあり、案件の数はまだ多くないものの、支援をおこなうケースもあるという。

瀬戸内地域の広域DMO構築など観光ブランド推進のために、瀬戸内地域の地銀7行と日本政策投資銀行などが共同で設立した「せとうち観光活性化ファンド」へのLP出資もそのひとつだ。
このファンドを通じて域内の観光関連事業者に出資がおこなわれ、訪日外国人観光客の移動手段、宿泊施設、観光施設の整備や観光サービスの提供が進められている。

「このようなインバウンド関連の案件はまだ少ないですが、今後は増えていくと考えています」と太田氏は話す。
近年の訪日外国人観光客の推移を見ても、太田氏の予想に疑いの余地はない。

また、ハイエンド事業の重要性についても関心が高く、中でも注目しているのがメディカルツーリズムとスポーツツーリズムだという。
特にスポーツツーリズムは、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックを控え、今が好機だと言えるだろう。

しかしながら、特に地方ではまだまだラグジュアリーな設備が不十分なところも少なくなく、このような設備を整えていくことへの投資も必要だという。
たとえば、瀬戸内地域の例にもある移動手段では、空港から宿泊先までのリムジンによる送迎やプライベートジェットを利用できる環境の整備などは、富裕層を受け入れる上で重要だというのが太田氏の考えだ。

このような富裕層インバウンドは、当社も注目しているキーワードのひとつで、「富裕層インバウンド研究会」を独自に立ち上げて、富裕層を呼び込みたいと考えている企業や自治体向けのサポートもスタートさせている。

 

投資に100%はない時には思い切った決断も大切

以前と比べて日本の景気は良くなってきているとはいえ、まだ中小企業まで波及していないせいか、投資に慎重な企業が多い印象だと太田氏は言う。
「投資である以上全勝ということはありません。むしろ、投資なのだから過度に慎重にならずに積極的に進めていくほうがいいと思っています」。

もちろん、計画がしっかりしていることが前提だ。
長崎の企業がアメリカに進出した日本茶カフェの案件では、ある程度時間をかけてコンサルティングを実施し、計画を練ったという。

数多くの案件に携わり、このようなシビアな目と大胆さを持ち合わせているのが、クールジャパン機構の強みのひとつだろう。

 

才能に投資するインキュベーションファンド

「企業だけでなく、才能のある人に投資するインキュベーションファンドができないかということも考えています」という太田氏。

「クールジャパン」という言葉からアニメやマンガを連想する方が多いことからもわかるように、日本のコンテンツの中には世界的に評価されているものも多い。
しかし、そんな作品を生み出したクリエイターやデザイナーも、初めから評価されていたわけではないし、今は無名でも磨けば輝く才能を持った人もまだまだ日本にいるはずだ。
当然このことはコンテンツ分野以外でも同様だ。

「日本にはいいモノがたくさんありますが、デザインという点ではダメですね。たとえば、世界一と言われているロンドン発の日本食レストランZUMAは洗練されたお洒落なお店ですが、創業者は日本人ではありません」。

つまり、日本には世界に通用するデザイナーがまだまだ足りないということだろう。

「普通なら日本人の日本食レストランがトップになっていないことを悔しいと思わないといけませんし、日本のモノは日本人がトップになるような仕組みを作らないといけないと思います」。

それを実現するアイディアのひとつがインキュベーションファンドであり、優れた才能を持った人を支援する仕組みなのだろう。

 

今回のインタビューを通して、足りない部分が多々あるとはいえ、日本にはまだたくさんのポテンシャルがあるということを痛感した。
当社でも海外進出や海外展開を考えている企業などを対象に、「アジア富裕層マーケティング研究会」を通して、まずはアジア圏富裕層の動向やトレンドを理解してもらうことを目的とした事業を展開しているので、アジア進出に向けたファーストステップとしてぜひ活用していただきたい。