富裕層に大人気、EUのゴールデンビザは是か非か

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一定額の投資や不動産購入で、居住権や市民権が手に入る「ゴールデン・ビザ」市場が活況だ。

5~6年前までは富裕層の移住先として人気のシンガポールでも、お金さえ持っていれば永住権が得られた。それが今や永住権の取得は国民との婚姻以外で取得することは非常に難しい状況となっている。そんななか、欧州各国は外国人富裕層から資金を集めるためにビザを発給している。しかしこの制により移民受け入れを不公平にするうえ、犯罪につながっているという指摘もあり、制度の見直しが求められている。

特にこの制度に興味を示すのは、政治治安が不安定といえる中国やロシアなどだ。EU加盟国のなかでこの制度が使える国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポルトガル、スペイン、イギリスだ。申請者は不動産や国債などに一定額の投資をすることが条件となっているが申請が認められれば、居住権や市民権が与えられる。さらにEU加盟国ならどこでも居住、就労が可能となり、シェンゲン圏での移動の自由が約束されることが、制度の魅力となっている。つまり、これらの国に投資し、タックスヘイブンであるキプロスに住むことも可能となる。

2008年の金融危機以来、景気の後押しをするため多くの国々がこの制度を取り入れたのだが、投資額は国毎に異なり、約1,000万円足らずの国もあれば約3億円と幅がある。ドイツのDW紙の報道によると、ロシア、中国の他にアフリカやトルコなどの富裕層がこの制度を利用してEU加盟国の市民権を手に入れているという。特にポルトガルでは、中国人富裕層からの人気が高く、制度の開始以来、約4,0000件の申請を中国から受け付けた。2位のブラジル約560件、3位の南アフリカ約250件だ。

しかし、この市民権付与にはEU全体のリスクになっている。イギリスでは深刻な医師不足だが政府の割当制度があるため、外国人医師のビザ申請が却下されている状況にある。資格のあるプロフェッショナルや亡命者が拒絶される一方で、厳しいチェックを受けることもない富裕層にドアが開かれるのは問題だと指摘されている。それと同時に、このビザがマネーロンダリングに使われているため、不正な資金が国境を越え、犯罪者は起訴を免れている事にEU加盟国は手を打たないと批判している。

ただでさえ多くの移民が押し寄せるEUで、冬になると移民も厳しい生活を強いられる。そのため、この反発がテロや紛争の火種とならぬようEU全体の深刻な安全保障上のリスクとなっている。

参照:産経Biz

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