いよいよ始まるCRSにどう対応するか?
写真:©Hervé Cortinat/OECD
2018年から日本も本格的に参加するコモンレポーティングスタンダード(CRS)。
多国間で金融口座情報を定期的に交換することを約した世界共通基準だが、果たして本格的な対応策はあるのだろうか?
ここ数年日本の税務当局は連続的に課税包囲網を強めてきた。国外財産調書、財産債務調書、国外送金等調書、出国税などここ3年程度で取られた措置だけでもこれだけある。
そこに伝家の宝刀よろしくコモンレポーティングスタンダード(以下CRS)の稼働が始まる。あくまで税の徴収の強化を狙ったものなので、合法的にしていればもちろん何の問題もないが、特に海外への送金や海外銀行口座開設がますます厳しくなるとの観測がある。個人にも法人にも適用されることを考えるとイヤ~な気分になる向きも多いだろう。
注目したいのは、各国で交換される情報の中身の表現方法だ。特に法人に対しては、「財団や信託を含む」ことが明記されており租税回避の常套手段であったこれらの方法もすべて明らかになっていくことが特徴的だ。
一方、保険商品の記述には要注目で、「保険商品の場合は、時価あるいは満期予定返金額、契約書面金額」が情報交換されることになっているが、保険は保険以上でも以下でもないため、契約期間中は価値の上昇分は課税対象にならないような印象も受ける。かなりの包囲網の中でこの保険の部分だけは違った印象を受けるのは当社だけではないだろう。今までも、そしてこれからも節税や相続対応に保険は大きな活用意義があり、事業としてさらに伸びていく要素が多分にあるというのも頷ける。
直近ではOECD加盟国間での情報交換ということになっているのも注目したいところだ。例えばオマーンやサウジアラビアなどは自動的情報交換基準の対象国とはなっていない。普通に生活し普通に事業を行い普通に節税し納税していれば誰にも何の問題もない。だが、これだけの包囲網を敷くということは、そうでない人がそれなりにいるということを意味する。かなりの脱税資金も明らかになるのだろう。
しかしながら、これをもって海外進出をしない方が面倒がないなと考えたり、海外銀行に口座を持ったり、海外金融商品を購入したりすると面倒が多くなる、などと考えるのは理に合わない。今までよりも意識しなければならないことが増えるだけで、これらの行動はむしろ推し進めていったほうがグローバル化が進む現代では合理的な発想だ。
今回の対象国となっていないオマーンなどで事業法人を作ることや海外の保険を知ることなどは具体的な対応法のひとつではあるが、変に動く必要もない。納税意識を向上させる必要には迫られるだろうが、節税意識を捨てる必要など全くないのだ。