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城址公園にある大型モニュメント

【シティマーケティングシフト Vol.2】まちづくりの成果を市民の実感に、“シビックプライド”に挑戦 – 富山県富山市

今年3月に開通した北陸新幹線。

北陸新幹線 JR富山駅

富山駅で降り、新幹線の改札口を出るとすぐ、路面電車の停留所が目に入る。
まさにLRTで有名な富山市を象徴する光景だ。
2005年に旧富山市を含む7市町村による新設合併によって発足した現在の富山市は、富山県の面積にして約3割、人口にして約4割を占める。
合併を機に鉄道や路面電車をはじめとする公共交通を「串」にみたて、地域の生活拠点である「お団子」を串で刺すようにむすび、沿線に様々な都市機能を集積させるまちづくりがはじまった。
これが、コンパクトシティ構想である。

2006年に開業した全国初の本格的LRT富山ライトレールを皮切りに、市電の環状線化など公共交通の整備に力を入れた結果、公共交通の利用がすすみ、中心市街地での滞在時間や消費金額も増加した。
コンパクトシティによる歩いて暮らせるまちづくりは経済的にも波及効果を生み、市街地の再開発事業などへの民間投資が活況だという。
富山市は公共交通に大幅な政策予算を投下しているが、きちんと投資対効果を出しているという点がすばらしい。

富山市はこのまちづくりで培った魅力を、積極的に対外発信している。
特に国際的な発信が特徴的で、国際会議での事例発表から国際会議への誘致を行っていった結果、2012年OECD(経済協力開発機構)の「コンパクトシティ政策報告書」の中で、世界の先進5都市の一つとして取り上げられた。

まちの魅力を対外的に発信するシティプロモーションの次の挑戦として富山市が取り組んでいるのが、シビックプライド事業だ。
市民ひとりひとりにまちの魅力を実感してもらい、市民の誇りとして育てる取り組みが始まっている。
コンパクトシティの良さを実感してもらうため、運賃や入館料を無料にする企画が各種打ち出されている。

さらに、海外の都市のケースを参考に、「AMAZING TOYAMA」が昨年スタートした。
これは市民が当たり前に享受していたものが、実は驚きのある新鮮なものだということを改めて感じてもらうためのキャンペーンだ。

ご当地ナンバープレート

大型のモニュメントをはじめ、ご当地ナンバープレートや工事用仮囲いのデコレーションなど、「AMAZING TOYAMA」のロゴを市内で浸透させるとともに、市民参加の関連事業をすすめている。

富山市のまちづくりの成功の要因として、トータルデザインの導入をあげることができる。
街の景観の統一性もさることながら、都市のヴィジョンが共有されているため役所と民間をはじめとする各所間でのコラボレーションが進み、一体化したまちづくりが実現できたと考えられる。


小林 司

文:小林 司 氏

1970年 埼玉県生まれ。
株式会社電通、楽天株式会社を経て、現在一般社団法人埼玉都市政策研究所代表理事。
楽天時代はインターネットマーケティング分野の執行役員や楽天イーグルスの立ち上げを担当。
現在はインターネット地域オピニオンメディア「クオリティ埼玉」主筆を務めるとともに、都市戦略、地域活性化のシンクタンクを主宰。