埼玉伝統工芸館

【シティマーケティングシフト Vol.1】ユネスコ無形文化遺産を体験型観光へ – 埼玉県小川町・東秩父村

昨年の11月27日にユネスコ(国際教育科学文化機関)が、日本の「和紙 手漉(てすき)和紙技術」を無形文化遺産に登録することを決定した。
この「シティマーケティングシフト」では、各都市がどのように自分たちのまちの魅力を外にアピールし地域を活性化させようとしているのか、いろいろな取り組み事例を通してシティマーケティングについて考えていこうと思っている。

第一回目として、選ばれた3つの和紙のうち「細川紙」の地元である埼玉県小川町、東秩父村をとりあげる。

この地方の和紙は、一般に「小川和紙」と呼ばれているが、特に強靭な紙質をもったものを「細川紙」という。
和歌山県の細川村で漉かれていた細川奉書を、江戸に近いこの地域で漉かれ発達した。
強靭で丈夫なため江戸時代の商人の帳簿によく使われていたそうだ。
いまは和本や文化財の修理用紙として使われている。

今回無形文化遺産に登録されたのは和紙そのものでなく、国内コウゾだけを原料にした伝統的な製法による手漉きの技術だが、その紙漉き職人の数は減っており、後継者をどう育成しこの技術を後世に伝えていくかが課題である。

和紙の里 和紙の里

小川町には埼玉伝統工芸会館、そして東秩父村には和紙の里という施設があり、それぞれ紙漉きを体験できる。
こういった施設を通じて細川紙の手漉き技術の伝承・後継者の育成に取り組んでいる。
今回の発表をうけて県外からの体験客も増え、埼玉県内でも紙漉きの体験学習を行う小学校が増えるそうだ。

足立村長との意見交換

東秩父村足立理助村長にうかがったところ、和紙の里を観光のハブ拠点にするべくバスターミナルなどの整備を計画しているということだった。
ユネスコの無形文化遺産になったことにより、今後は国外からの観光客も期待でき、紙漉きがまさに体験型観光のコンテンツになるということだ。

体験型観光のコンテンツになる紙漉きのさらなる展開は、製品としての和紙のアピールではないだろうか。
障子や壁紙などの材料としてはどうしても工業製品に比べ価格競争力で劣ってしまう。
そこで和紙工芸品や折り紙を製品単体ではなく、日本文化とともにアピールをしながら認知を広げていく。
そして和紙のもつ強靭さをファッションやその他工業製品など他業界における新しい素材としてその需要を喚起してはどうだろう。地場産業の発展を通じて歴史と伝統をもつ技術が後々まで伝わることが、町や村のかけがえのない財産になるであろう。


小林 司

文:小林 司 氏

1970年 埼玉県生まれ。
株式会社電通、楽天株式会社を経て、現在一般社団法人埼玉都市政策研究所代表理事。
楽天時代はインターネットマーケティング分野の執行役員や楽天イーグルスの立ち上げを担当。
現在はインターネット地域オピニオンメディア「クオリティ埼玉」主筆を務めるとともに、都市戦略、地域活性化のシンクタンクを主宰。