62%が富裕層戦略の必要性を認識成功への第一歩は富裕層の正しい理解
重要なのはターゲットを絞り適切な戦略を立てること
政府が重要課題のひとつとしている「地方創生」。
しかしながら、現実はなかなかうまくいっていないケースが多いというのが実情ではないだろうか。
そこで当社では、自治体の観光課や観光コンベンションビューローを中心に、地方創生と富裕層戦略をテーマにアンケートを実施した。
現在、富裕層をターゲットとした地方創生の取り組みを実施していると回答したのはわずか21%。
ほとんどが実施していない、または検討段階という結果だった(グラフ1参照)。
しかし、その必要性に関しては62%が必要と答え、現状とは逆の結果となった(グラフ2参照)。
また、地銀系シンクタンクにも地方創生のための富裕層戦略に関する調査研究について緊急アンケートを実施し、いくつかの回答を得た。
地方創生を目的とした調査研究の実施割合はシンクタンクによってまちまちだが、いずれの場合もその中で富裕層戦略に関する調査研究は必要だと回答している。
特に海外富裕層インバウンドに関しては増えていくと考えているようだ。
一方、具体的な調査実績についてはほとんどないのが現状のようで、富裕層戦略の必要性は感じているものの具体的な取り組みはまだできていないという自治体観光課などの現状と同様の結果となるものと推察される。
当然ながら富裕層戦略だけが地方創生の解決策ではないが、重要なキーワードのひとつであることはやはり間違いないようだ。
とはいうものの、少なくとも旅行分野に限って言えば、具体的な施策まで考えているところはほとんどないというのが当社の意見だ。
過去に国内でおこなわれた旅行商談会で実施した観光関連の担当者へのヒアリングでも、ほとんどが必要性を感じているということにとどまっている。
他に目立った意見としては、特別富裕層にターゲットを絞るということはなく、全ての人を対象にしているというものだ。
実際にそうなれば素晴らしいことではあるが、現実はそう簡単ではないだろう。
全ての人を対象にというのは、言い換えれば戦略がないということでもあるからだ。
富裕層戦略の第一歩は資産の把握と富裕層の理解
地方創生における富裕層戦略で最も必要なことでは、名産品や特産品の富裕層への展開よりも、富裕層観光客誘致のための宿泊施設や人材の整備のほうが多いという結果になった(グラフ4参照)。
前述のヒアリングでも、富裕層戦略の必要性は感じているが、ファイブスターの宿泊施設がないため、受け入れる体制が整っていないという意見が目立った。
もちろんファイブスターのホテルや旅館があるに越したことはないが、このような宿泊施設の整備は一朝一夕にできるものではないし、このような宿泊施設があれば富裕層が訪れるというものでもない。
むしろ、既に持っている資産をしっかりと活用することにフォーカスすることのほうが重要ではないだろうか。
たとえば、伝統的な日本家屋は、日本人にとっては古い昔の家だが、海外の富裕層にとっては、そこでしかできない貴重な文化体験になるケースもある。
当社ではこのような視点から、都道府県ごとに観光地や名産品を、HighNetWorth Magazineの読者に本誌やウェブサイトを活用してトータルにプロモーションするためのパッケージを展開している。
富裕層にダイレクトPRしたいというニーズにはベストマッチだ。
同時に、富裕層についてもしっかりと理解しておくことが重要だ。
よく「富裕層の定義は何か」、「富裕層は具体的にどのような人か」という質問をされるが、当然国内の富裕層をターゲットにするのか、海外の富裕層をターゲットにするのかによって戦略は異なる。
当社では、国内富裕層の動向やトレンド理解することを主な目的とした「富裕層マーケティング研究会」と、アジア圏富裕層の動向やトレンド理解することを主な目的とした「アジア富裕層マーケティング研究会」を用意している。
地方創生のための富裕層戦略を進めていく上でも、まずは今ある強みを把握すること、富裕層について理解することから始めることをオススメしたい。