シンガポールでPrivate Banking Asia に参加してきました。
毎年シンガポールで行われるプライベートバンキングアジアにメディア枠をいただき参加してきました。ジュリアスベア、ロンバーオディエ、クーツ、バンクオブシンガポールなどプライベートバンク専門の銀行から、クレディスイスやUBSなどの総合金融機関まで多くのディレクターが集まり、プライベートバンキング業界の現状や問題点、疑問点などをぶつけ合うパネルディスカッションのいくつかを拝聴しました。
日本ではあまりなじみのないプライベートバンク(PB)業界ですが、シンガポールでは大なり小なりかなりの数のPBが暗躍(笑)しています。何点か気が付いたことを列記します。
1:運用商品のキモは生命保険の解約返戻金と不動産が多い
個人として生命保険に入る場合は解約することが前提となっていないので、解約返戻金という言葉すらなかなか頭に浮かんできませんが、PBの運用担当者にとっては重要な運用商品のようです。要するに生命保険の解約返戻金の「結果的な」投資利回りというのは昔からかなりいいものなんですね。もっとも安定しているもののひとつといってもいいのではないでしょうか。当然長期運用しなければ複利の奇跡は享受できないでしょうけれども、この視点は大きな学びになりますね。特に安定運用派にとってはいい商品性なんだろうと思います。
一方、不動産ですが、結局これも昔から安定運用派の駆け込み寺みたいなところがあります。要するに安定的な収益を生み出す可能性が高い商品というわけです。為替や各国GDPの情報などをにらみながら、あるいは、着工件数や開発情報などもにらみながら投資先を決めていくようです。今現在はオーストラリアの不動産に妙味ありという話が多いですね。
2:金融業界の方々が「本当はこうしたい」をやっている銀行あり
さて、今回のプライベートバンキングアジアに参加してもっとも印象的だったことにもなるんですが、クーツ銀行のウェルスプランニングの女性責任者がとても面白い発言をしていました。「私の辞書にあるウェルスプランニングの意味は顧客の人生を豊かにする、という意味です。お金を増やすことではありません」。クーツ銀行といえば泣く子も黙る王室御用達の名門銀行です。歴史もあります。当然長期にわたって運用成績がよいからそこまでの歴史を刻むことができた、これは当然そうでしょう。面白かったのは彼女が自分のビジネスを金融業と定義していなかったこと、です。
実はこの発言には多くのPB関係者が「そうだよね」という反応をしたんですね。「実はそうしたいんだ」と思っていることなんでしょう。でもオープンにはなかなか言えないことのようです。違う業界からPBのウェルスプランニングに転職した、しかも女性であったことが本音をこの場で発表する原動力になったのかと思います。
実は当社が進めている「ライフスタイルマネジメント」の概念なんですね、これ。彼女は直接いっていました。「そう、私の仕事はライフスタイルマネジャーだもの」。PB業界も非金融サービスが戦略として重要になってきた証だと受け取りました。もっとこの環境が進んでほしいですね。