グリーン発電会津のバイオマス発電所

【シティマーケティングシフト Vol.3】街をスマートシティの実験場に – 福島県 会津若松市

明治維新における新政府軍と旧幕府軍の戦い戊辰戦争で降伏をした会津藩は、薩長藩閥政府では官界などでの出世が厳しかったものの、藩校日新館を初め教育に力を入れる家風のおかげで活躍する人材を輩出した。

会津大学

現代の会津若松市はICT(情報通信技術)の専門大学である会津大学を中心に新たな人材輩出、産業政策に取り組んでいる。

ビッグデータ時代が本格的に到来すると、そのデータを分析しビジネスに活かす人材が必要になる。
このような分析、つまりアナリティクス人材を育成し、新しいICTに関連する産業の集積を目指している。
2年半前からすすめてきた「スマートシティ会津若松」では、会津若松市が盆地にあり猪苗代湖にも面しているという立地をうまく活かし、風力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギーや、またスマートグリッド、つまり電力の見える化を一部地域に導入して、震災後の電力供給の多様化、省電力化に対して積極的に取り組んできた。

そしてこの「スマートシティ会津若松」は国の地方創生とも連携して、「アナリティクス産業の集積」による地域活性化を戦略に掲げている。
これを推進していくためのエンジンとして産官学の包括的提携組織をつくり、様々な実証実験を行っていくという。
その実証実験の一例をあげると、流通大手のイオンと連携して農作物を栽培から配送、売り場までセンサーで測定し続け、鮮度の高い形で消費者に届けられるようにするというものなどがある。
また農業での取り組みでも富士通の半導体クリーンルームで腎臓病患者等でも食べられる低カリウムのレタスの栽培を行い、野菜工場を昨年から本格的にスタートしている。

会津若松駅

会津若松市の人口は約13万人。

「10万人都市くらいの規模が実証実験にはちょうどいい。
ぜひ会津若松を実証フィールドに使ってもらいたい。
私たちはそこから会津モデルを創っていきたい」と市役所の職員の方は熱く意気込みを語った。

“会津の3泣き”という言葉がある。
外から来た人がはじめは閉鎖的でよそ者扱いされて泣く、次に会津の人の心の温かさと深い人情に触れて泣く、最後に離れるとき離れがたくて泣く、というものだ。

データの解析やICTを使ったデジタルの先端的な実験が行われているのが、実は厚い人情の地というアナログに支えられているということが人間臭さを感じてとてもうれしくなった。


小林 司

文:小林 司 氏

1970年 埼玉県生まれ。
株式会社電通、楽天株式会社を経て、現在一般社団法人埼玉都市政策研究所代表理事。
楽天時代はインターネットマーケティング分野の執行役員や楽天イーグルスの立ち上げを担当。
現在はインターネット地域オピニオンメディア「クオリティ埼玉」主筆を務めるとともに、都市戦略、地域活性化のシンクタンクを主宰。